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桃太郎 Momotaro the Peach Boy /日本おとぎ話 
  作者不明 / 2003年8月27日作成 楠山正雄

 

第2章

おじいさんとおばあさんは、それはそれはだいじにして桃太郎(ももたろう)を育(そだ)てました。桃太郎(ももたろう)はだんだん成長(せいちょう)するにつれて、あたりまえの子供(こども)にくらべては、ずっと体(からだ)も大きいし、力(ちから)がばかに強(つよ)くって、すもうをとっても近所(きんじょ)の村(むら)じゅうで、かなうものは一人(ひとり)もないくらいでしたが、そのくせ気(き)だてはごくやさしくって、おじいさんとおばあさんによく孝行(こうこう)をしました。
桃太郎(ももたろう)は十五になりました。
もうそのじぶんには、日本(にほん)の国中(くにじゅう)で、桃太郎(ももたろう)ほど強(つよ)いものはないようになりました。桃太郎(ももたろう)はどこか外国(がいこく)へ出かけて、腕(うで)いっぱい、力(ちから)だめしをしてみたくなりました。


するとそのころ、ほうぼう外国(がいこく)の島々(しまじま)をめぐって帰(かえ)って来(き)た人があって、いろいろめずらしい、ふしぎなお話(はなし)をした末(すえ)に、
「もう何年(なんねん)も何年(なんねん)も船(ふね)をこいで行くと、遠(とお)い遠(とお)い海(うみ)のはてに、鬼(おに)が島(しま)という所(ところ)がある。悪(わる)い鬼(おに)どもが、いかめしいくろがねのお城(しろ)の中に住(す)んで、ほうぼうの国(くに)からかすめ取(と)った貴(とうと)い宝物(たからもの)を守(まも)っている。」と言(い)いました。
桃太郎(ももたろう)はこの話(はなし)をきくと、その鬼(おに)が島(しま)へ行ってみたくって、もう居(い)ても立(た)ってもいられなくなりました。そこでうちへ帰(かえ)るとさっそく、おじいさんの前(まえ)へ出て、 「どうぞ、わたくしにしばらくおひまを下(くだ)さい。」  と言(い)いました。


おじいさんはびっくりして、 「お前(まえ)どこへ行くのだ。」  と聞(き)きました。
「鬼(おに)が島(しま)へ鬼(おに)せいばつに行こうと思(おも)います。」  と桃太郎(ももたろう)はこたえました。
「ほう、それはいさましいことだ。じゃあ行っておいで。」  とおじいさんは言(い)いました。
「まあ、そんな遠方(えんぽう)へ行くのでは、さぞおなかがおすきだろう。よしよし、おべんとうをこしらえて上(あ)げましょう。」  とおばあさんも言(い)いました。
そこで、おじいさんとおばあさんは、お庭(にわ)のまん中に、えんやら、えんやら、大きな臼(うす)を持(も)ち出(だ)して、おじいさんがきねを取(と)ると、おばあさんはこねどりをして、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ。」
と、おべんとうのきびだんごをつきはじめました。


きびだんごがうまそうにでき上(あ)がると、桃太郎(ももたろう)のしたくもすっかりでき上(あ)がりました。
桃太郎(ももたろう)はお侍(さむらい)の着(き)るような陣羽織(じんばおり)を着(き)て、刀(かたな)を腰(こし)にさして、きびだんごの袋(ふくろ)をぶら下(さ)げました。そして桃(もも)の絵(え)のかいてある軍扇(ぐんせん)を手に持(も)って、
「ではおとうさん、おかあさん、行ってまいります。」 と言(い)って、ていねいに頭(あたま)を下(さ)げました。
「じゃあ、りっぱに鬼(おに)を退治(たいじ)してくるがいい。」  とおじいさんは言(い)いました。
「気(き)をつけて、けがをしないようにおしよ。」  とおばあさんも言(い)いました。
「なに、大丈夫(だいじょうぶ)です、日本一(にっぽんいち)のきびだんごを持(も)っているから。」と桃太郎(ももたろう)は言(い)って、
「では、ごきげんよう。」  と元気(げんき)な声(こえ)をのこして、出(で)ていきました。おじいさんとおばあさんは、門(もん)の外(そと)に立(た)って、いつまでも、いつまでも見送(みおく)っていました。

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