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声を出して一緒に読んでみましょう

桃太郎 Momotaro the Peach Boy /日本おとぎ話 
  作者不明 / 2003年8月27日作成 楠山正雄

 

第4章

ももたろう)は、犬(いぬ)と猿(さる)をしたがえて、船(ふね)からひらりと陸(おか)の上にとび上(あ)がりました。
見(み)はりをしていた鬼(おに)の兵隊(へいたい)は、その見(み)なれないすがたを見(み)ると、びっくりして、あわてて門(もん)の中に逃(に)げ込(こ)んで、くろがねの門(もん)を固(かた)くしめてしまいました。その時(とき)犬(いぬ)は門(もん)の前(まえ)に立(た)って、
「日本(にほん)の桃太郎(ももたろう)さんが、お前(まえ)たちをせいばいにおいでになったのだぞ。あけろ、あけろ。」
とどなりながら、ドン、ドン、扉(とびら)をたたきました。鬼(おに)はその声(こえ)を聞(き)くと、ふるえ上(あ)がって、よけい一生懸命(いっしょうけんめい)に、中から押(お)さえていました。
するときじが屋根(やね)の上からとび下(お)りてきて、門(もん)を押(お)さえている鬼(おに)どもの目をつつきまわりましたから、鬼(おに)はへいこうして逃(に)げ出(だ)しました。その間(ま)に、猿(さる)がするすると高(たか)い岩壁(いわかべ)をよじ登(のぼ)っていって、ぞうさなく門(もん)を中からあけました。
「わあッ。」とときの声(こえ)を上(あ)げて、桃太郎(ももたろう)の主従(しゅじゅう)が、いさましくお城(しろ)の中に攻(せ)め込(こ)んでいきますと、鬼(おに)の大将(たいしょう)も大(おお)ぜいの家来(けらい)を引(ひ)き連(つ)れて、一人一人(ひとりひとり)、太(ふと)い鉄(てつ)の棒(ぼう)をふりまわしながら、「おう、おう。」とさけんで、向(む)かってきました。

桃太郎


けれども、体(からだ)が大きいばっかりで、いくじのない鬼(おに)どもは、さんざんきじに目をつつかれた上に、こんどは犬(いぬ)に向(む)こうずねをくいつかれたといっては、痛(いた)い、痛(いた)いと逃(に)げまわり、猿(さる)に顔(かお)を引(ひ)っかかれたといっては、おいおい泣(な)き出(だ)して、鉄(てつ)の棒(ぼう)も何(なに)もほうり出(だ)して、降参(こうさん)してしまいました。
おしまいまでがまんして、たたかっていた鬼(おに)の大将(たいしょう)も、とうとう桃太郎(ももたろう)に組(く)みふせられてしまいました。桃太郎(ももたろう)は大きな鬼(おに)の背中(せなか)に、馬乗(うまの)りにまたがって、
「どうだ、これでも降参(こうさん)しないか。」 といって、ぎゅうぎゅう、ぎゅうぎゅう、押(お)さえつけました。
鬼(おに)の大将(たいしょう)は、桃太郎(ももたろう)の大力(だいりき)で首(くび)をしめられて、もう苦(くる)しくってたまりませんから、大(おお)つぶの涙(なみだ)をぼろぼろこぼしながら、
「降参(こうさん)します、降参(こうさん)します。命(いのち)だけはお助(たす)け下(くだ)さい。その代(か)わりに宝物(たからもの)をのこらずさし上(あ)げます。」
こう言(い)って、ゆるしてもらいました。
鬼(おに)の大将(たいしょう)は約束(やくそく)のとおり、お城(しろ)から、かくれみのに、かくれ笠(がさ)、うちでの小(こ)づちに如意宝珠(にょいほうじゅ)、そのほかさんごだの、たいまいだの、るりだの、世界(せかい)でいちばん貴(とうと)い宝物(たからもの)を山のように車(くるま)に積(つ)んで出(だ)しました。

桃太郎

桃太郎(ももたろう)はたくさんの宝物(たからもの)をのこらず積(つ)んで、三にんの家来(けらい)といっしょに、また船(ふね)に乗(の)りました。帰(かえ)りは行きよりもまた一そう船(ふね)の走(はし)るのが速(はや)くって、間(ま)もなく日本(にほん)の国(くに)に着(つ)きました。
船(ふね)が陸(おか)に着(つ)きますと、宝物(たからもの)をいっぱい積(つ)んだ車(くるま)を、犬(いぬ)が先(さき)に立(た)って引(ひ)き出(だ)しました。きじが綱(つな)を引(ひ)いて、猿(さる)があとを押(お)しました。 「えんやらさ、えんやらさ。」
三にんは重(おも)そうに、かけ声(ごえ)をかけかけ進(すす)んでいきました。
うちではおじいさんと、おばあさんが、かわるがわる、 「もう桃太郎(ももたろう)が帰(かえ)りそうなものだが。」
と言(い)い言(い)い、首(くび)をのばして待(ま)っていました。そこへ桃太郎(ももたろう)が三にんのりっぱな家来(けらい)に、ぶんどりの宝物(たからもの)を引(ひ)かせて、さもとくいらしい様子(ようす)をして帰(かえ)って来(き)ましたので、おじいさんもおばあさんも、目も鼻(はな)もなくして喜(よろこ)びました。
「えらいぞ、えらいぞ、それこそ日本一(にっぽんいち)だ。」  とおじいさんは言(い)いました。
「まあ、まあ、けががなくって、何(なに)よりさ。」  とおばあさんは言(い)いました。

桃太郎(ももたろう)は、その時(とき)犬(いぬ)と猿(さる)ときじの方(ほう)を向(む)いてこう言(い)いました。
「どうだ。鬼(おに)せいばつはおもしろかったなあ。」 犬(いぬ)はワン、ワンとうれしそうにほえながら、前足(まえあし)で立(た)ちました
。 猿(さる)はキャッ、キャッと笑(わら)いながら、白(しろ)い歯(は)をむき出(だ)しました。
きじはケン、ケンと鳴(な)きながら、くるくると宙返(ちゅうがえ)りをしました。
空(そら)は青々(あおあお)と晴(は)れ上(あ)がって、お庭(にわ)には桜(さくら)の花(はな)が咲(さ)き乱(みだ)れていました。

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