HOMEreading bookThe Tale of Miminashi-Hoichi

声を出して一緒に読んでみましょう

耳なし芳一 Miminashi-Hoichi/日本の物語 
  成立年:1894年 - 1904年/作者:小泉八雲 (パトリック・ラフカディオ・ハーン)

 参考:(福娘童話集きょうの日本昔話・コモンズ紙芝居日記・英語で本三昧)

第3章

耳なし芳一女官


一人の女官(じょかん→宮中に仕える女性)が、芳一に言いました。
「芳一や、さっそく、そなたのびわにあわせて、平家の物語を語ってくだされ」
「はい。長い物語ゆえ、いずれのくだりをお聞かせしたらよろしいのでしょうか?」
「・・・壇ノ浦のくだりを」
「かしこまりました」
芳一は、びわを鳴らして語り始めました。
ろをあやつる音。
舟にあたってくだける波。
弓鳴りの音。
兵士たちのおたけびの声。
息たえた武者が、海に落ちる音。
これらの様子を、静かに、もの悲しく語り続けます。


大広間は、たちまちのうちに壇ノ浦の合戦場になってしまったかのようです。
やがて平家の悲しい最後のくだりになると、広間のあちこちから、泣き声がきこえ始めました。そして、芳一のびわが終わってもしばらくは誰も口をきかず、シーンと静まりかえっていました。
やがて、さっきの女官が言いました。
「殿も、たいそう喜んでおられます。
よい物を、お礼に下さるそうじゃ。
されど今夜より六日間、毎夜そなたのびわを聞きたいとおっしゃっています。
明日の夜も、このやかたにまいられるように。
それから寺へ戻っても、この事はけっして誰にも話してはならぬ。よろしいな」
「はい」

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