日本語でのコミュニケーションにおいて、聞かれたことに対たいして適切に答えることは基本ですが、特に外国人学習者が陥りやすいのが「時制のズレ」です。例えば「お元気ですか」という現在の状態を問う質問に、誤って「はい、元気でした」と過去形で答えてしまうケースです。これは、質問の意図する「今」と応答の「過去」が呼応しておらず、聞き手に違和感を与えてしまいます。正しい時制の呼応を学ぶことで、あなたの日本語はより自然で正確なものになるでしょう。
【注意したい日本語表現Ⅰ】質問と応答の呼応
ビジネスシーンにおいて、質問と応答の時制を一致させることは、「問われた時点での事実を正確に伝える」という意味で極めて重要です。「(今)順調ですか」に「(過去に)順調でした」と答えれば、「では今は問題があるのか」という新たな懸念を生みます。意図せず相手を不安にさせたり、誤解を招いたりしないよう、聞かれた「時」に合わせて答える技術が不可欠です。
ビジネスで特に注意したい時制の呼応
「〜ですか」(現在の状態)への応答
「お元気ですか」「大丈夫ですか」など、名詞やナ形容詞に「です」がつく質問は、基本的に「今の状態」を尋ねています。したがって、答えも「です」で返すのが原則です。
使用例:
(質問)「山田さん、お元気ですか。」
(良い応答)「はい、おかげさまで元気です。」
(誤った応答)「はい、元気でした。」(→ 聞き手は「え、今は元気じゃないの?」と心配になる)
(文法的な誤り)「はい、元気だした。」(→ 「でした」か、動詞の「出した」との混同)
「〜ましたか」(過去・完了)への応答
「〜ましたか」は、その動作がすでに完了したかを尋ねています。最もよくある間違いは、これを「〜ます」と未来や習慣で答えてしまうことです。
使用例:
(質問)「お送りした資料、ご確認いただけましたか。」
(良い応答)「はい、昨日拝見しました。」
(誤った応答)「はい、拝見します。」(→ これから見る、の意味になり、質問に答えていない)
「〜ていますか」(現在進行・状態)への応答
「〜ていますか」は、「今まさ…」という進行中の動作か、「完了した結果が残っている」状態を聞いています。これも「〜ました」と答えるとズレが生じます。
使用例:
(質問)「プロジェクトは順調に進んでいますか。」
(良い応答)「はい、問題なく進んでいます。」
(誤った応答)「はい、進みました。」(→ 過去に進んだが、今は止まっている?と感じさせる)
「〜ますか」(未来・意志)への応答
「〜ますか」の形で、これからの予定や意志いしを尋ねる場合です。これも過去形で答えると、会話が成立しません。
使用例:
(質問)「明日の懇親会には参加しますか。」
(良い応答)「はい、参加します。」
慣れるまでは大変ですが…
外国人の人は誰でも経験することです。難しく考えないでまずは質問の「語尾」をよく聞いてみましょう。そして、それをあなたの応答の最後に持ってくれば大概はうまくいくはずです。(疑問文を表す「か」などは言わないでくださいね)
「昨日は楽しかったですか?」→「楽しかったです。」(語尾の「か」はいわない)
「明日はどこに行きますか?」→「東京に行きます。」(語尾の「か」はいわない)



