日本で働く際にさけてはとおれないのが「面接」。面接では、実際に候補者(あなた)と会社が面と向かって対話することで、会社の雰囲気にあっているか、しっかりと働いてくれるか を確認する場となります。今回は、そんな面接で自分の力を出し切るためにすべきことを解説します。
面接の構造(必ず読んでください)

面接では、さまざまな質問がなされますが、構造としては下の3点を横断的に尋ねていることになります。
【1:過去の経験・そこで考えたこと】(過去)
【2:現在の性格・興味があること】(現在)
【3:将来、どんな人生を歩みたいか】(未来)
必ず面接官は、あなたの人生を「過去→現在→未来」の流れで聞いてくるはずです。そのときに大切なのは、一貫した価値観を維持すること。例えば、過去の経験を通して「粘り強く一つのことを成し遂げるタイプ」であると言っているのに、将来は「1つのことでは飽きるから多角的にしてみたい」とだけ述べてしまうと、主張としてかなり弱くなります。面接は「あなたのなりたい将来」から逆算して過去の経験を結び付けてください。過去の経験を適当に選んで話さないことがたいせつです。
面接での注意点

では、これから面接の流れを見ていきますが、その前に絶対に守ってほしいことがあります。
1. 面接時には、大きな声ではきはき話すこと。たとえ日本語に自信がない場合でも、ゆっくり話せばOKです。
2. 面接時には笑顔を見せること。面接は印象で決まりますので、友好的な印象を与えましょう。
3. 面接時には(労働条件など、法的に権利保護されているゾーンを除き)面接官とディベートしようとしないこと。まずは相手の意見を受け止める寛容さがとても大切です。間違っても歯向かったりしないでください。
4. 「なぜ」「どうして」とあなたの人生を深堀りする質問にであうかもしれません。しかし、先ほども述べたように、面接で見られるているのは「あなたの人生の軸」ですので、そこがぶれていなければ何も心配することはありません。その軸をサポートするための、過去の経験・現在の性格・将来の展望を一貫して話せば問題ありません。
面接の流れ

では、実際に面接を受けると仮定しましょう。ここでは、インドネシアに住むXさんを題材とします。XさんはJLPTN4相当の日本語能力をもち、日本の外食チェーンで働きたいと考えています。ただ、例の日本語は難しく、これを話せる必要はありません。あくまでこれと同様の「趣旨」であればOKです。
導入:入室(オンライン面接を含む)と自己紹介
(コンコンとドアをノックして入室(オンライン面接では挨拶をする)。お辞儀をして、指定された席に着席)
面接官: 「Xさん、こんにちは。本日は面接にお越しいただきありがとうございます。まず、簡単に自己紹介をお願いします。」
Xさん: 「はい。わたしは Xです。インドネシアから 来ました。 子供のとき、日本のアニメが好きでした。だから、日本の文化に興味が あります。 特に、日本の食べ物は、とてもおいしいです。店のサービスも、すばらしいです。感動しました。 だから、将来、日本の レストランの仕事がしたい です。 本日は、どうぞ よろしくおねがいします。」
ポイント: ここでは、自分がどんな人間で、なぜこの場にいるのか(=興味の原点)を簡潔に伝えます。これが「過去」のストーリーの入り口となります。
【1:過去の経験・そこで考えたこと】を深掘りする質問
面接官は、あなたの自己紹介や履歴書から、あなたの「過去」についてさらに詳しく知ろうとします。
面接官: 「日本の外食サービスのどんなところに感動したのですか?具体的な経験があれば教えてください。」
Xさん: 「はい。えーと… インドネシアに、日本のラーメン屋があります。そこへ行きました。 店員さんは、とても元気な声でした。『いらっしゃいませ!』。店は、とても にぎやかで、いい雰囲気でした。 私が、ラーメンの食べ方が、すこし分かりません…。そのとき、店員さんは、私を見ました。そして、笑顔で教えてくれました。 ラーメンを食べるだけじゃないです。気持ちも、とても楽しかったです。 だから、私も、お客さんを 笑顔にしたい です。そう思いました。」
ポイント: ここで重要なのは「具体的なエピソード(過去の経験)」と「そこから何を考えたか(価値観)」をセットで話すことです。「(お客様を)笑顔にしたい」という、あなたの「人生の軸」となるキーワードが見えてきます。
面接官: 「インドネシアで、何か仕事やアルバイトの経験はありますか?」
Xさん: 「はい。学生のとき、カフェでアルバイトをしました。2年です。 忙しい時間は、とても大変でした。でも、友達と、いっしょに 頑張りました。 お客さん、たくさん待ちます。ダメです。だから、はやく、はやく、仕事をしました。 アルバイトで、チームで働くことは 大切だ と、わかりました。難しい仕事が終わって、とても楽しかったです。」
ポイント: 外食チェーンという「チームで働く」職場への適性を示唆する経験を選んで話しています。「将来から逆算して過去の経験を選ぶ」という、最初の文章にあったアドバイスを実践している例です。
【2:現在の性格・興味があること】を問う質問
過去の経験を通して形成された「現在のあなた」について質問されます。
面接官: 「あなたの長所は何ですか?」
Xさん: 「はい。私の長所は、あきらめないこと です。頑張ります。 カフェのアルバイトは、はじめ、たくさん覚えます。大変でした。でも、毎日すこし、勉強しました。 半年あと、お店の仕事は、ぜんぶできます、なりました。 日本語の勉強も、毎日しました。だから、N4に合格しました。これからも、頑張ります。」
ポイント: 長所を伝える際は、必ず「過去の経験」を根拠として話しましょう。これにより、言葉に説得力が生まれます。「粘り強さ」という長所が、過去の経験と一貫しています。
面接官: 「日本で働く上で、何か心配なことはありますか?」
Xさん: 「はい。日本語で話すこと、まだ すこし心配です。 特に、お客さんに、ていねいな日本語を話すことは、むずかしいです。 でも、大丈夫です。 会社に入る前に、たくさん勉強します。 会社に入ったあと、先輩の日本語を よく見て、よく聞いて、勉強したいです。」
ポイント: 短所や不安な点を正直に話しつつ、それを克服するための現在の努力や未来に向けた意欲をセットで伝えることが大切です。
【3:将来、どんな人生を歩みたいか】を問う質問
いよいよ「未来」についての質問です。ここが、あなたが一貫して伝えてきた価値観のゴールとなります。
面接官: 「この会社に入ったら、将来どのように活躍したいですか?」
Xさん: 「はい。まず、お店の仕事を はやく覚えたい です。そして、お客さんを笑顔にするサービスをしたいです。 将来は… えーと、私みたいに、日本で働きたいインドネシアの人が、たくさんいます。その人たちの、良い先輩に、なりたいです。 この会社で、日本のすばらしいサービスをたくさん勉強して、いつか、インドネシアに 持って帰って、みんなに教えたいです。それが私の夢です。」
ポイント: 「お客様を笑顔にしたい(過去からの動機)」→「お店で活躍する(現在から未来への目標)」→「母国に伝えたい(将来の夢)」というように、「過去→現在→未来」が一つの線で繋がりました。会社への貢献と、あなた自身の人生のビジョンが重なる、素晴らしい回答です。
結び:逆質問
面接官: 「最後に、何か質問はありますか?」
Xさん: 「はい、質問、あります。ありがとうございます。 えーと、研修について、聞きたいです。 私たち、外国人のための研修は、ありますか? どんな研修ですか? 教えてください。」
ポイント: 「何かありますか?」と聞かれて「特にありません」と答えるのは避けましょう。仕事への意欲を示すチャンスです。面接の雰囲気によっては、給与や休日など、聞きづらい条件面も聞ける場合があります。
まとめ
このように、面接は「あなたの人生の軸(今回の例では『人を喜ばせたい』というおもてなしの心)という一本の串に、「過去の経験」「現在のあなた」「未来の展望」という団子を刺していくような作業です。