日本語の敬語には、大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。これらを混同したり、間違った相手に使ったりすると、敬意を示すどころか、逆に失礼にあたる危険があります。特に「誰の行動について話しているのか」を意識することが重要です。この3つを明確に使い分けられてこそ、あなたの日本語は成熟し、ビジネスにおける信頼関係を強固なものにするでしょう。
【注意したい日本語表現Ⅲ】敬語の使い分けの意義
ビジネスシーンにおいて、3種類の敬語を使い分けることは、「相手、自分、そして話題の中の人物との関係性を正確に把握しています」という高度な社会性を示します。
ビジネスで特に注意したい使い分け
尊敬語(相手の行動に使う)
お客様や上司など、相手や話題の中の人が「する」行動・状態を高める言葉です。主語は常に「相手側」です。
使用例:
「部長が(言う)→おっしゃる」
「お客様が(来る)→いらっしゃる・お越しになる」
「先生が(する)→なさる」
(誤り)「私が資料をご覧になりました。」(→「私」に尊敬語は使わない)
謙譲語(自分の行動に使う)
自分や「身内(社内の人など)」が「する」行動をへりくだって表現し、結果的に相手を高める言葉です。主語は「自分側」です。
使用例:
「私が(言う)→申す・申し上げる」
「私が(行く)→伺う・参る」
(誤り)「部長が申し上げます。」(→相手(部長)の行動に謙譲語は使わない)
丁寧語(聞き手への配慮)
相手や主語が誰かを問わず、聞き手に対して丁寧に伝える言葉です。「です」「ます」が基本です。
使用例:
「今日は寒いです。」(「だ」→「です」)
「会議が始まります。」(「始まる」→「始まります」)
「ご飯を食べます。」(「お」や「ご」をつけるのも丁寧語の一種)
間違えやすい「身内への敬語」
社外の人(お客様など)と話す時、自分の会社の上司(部長など)は「身内」とみなします。したがって、身内である部長に尊敬語を使ってはいけません。
使用例:(お客様への電話で)
(誤り)「申し訳ありません。山田部長は、ただいま席にいらっしゃいません。」
(正しい)「申し訳ありません。部長の山田は、ただいま席を外しております。」
混乱しやすい「二重敬語」
丁寧にしようとしすぎるあまり、敬語を2つ重ねてしまう間違いです。過剰であり、正しくはありません。
使用例:
(誤り)「社長が「おっしゃられる」(「おっしゃる(尊敬語)」+「〜られる(尊敬語)」)
(正しい)「社長が「おっしゃる」」
(誤り)「資料を拝見させていただきました。」(「拝見する(謙譲語)」+「〜させていただく(謙譲語)」)
(正しい)「資料を拝見しました。」


